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千住博

千住博インタビュー

HP用千住作品1

ウォーターフォール

日本画家を志すきっかけとなったエピソードについて、あらためてお聞かせください。

慶應義塾高校在学中に、日本画家である美術担任の勧めで日本画のグループ展を観に行きました。その際、僕は展示されている絵のことよりも、日本画の絵の具、天然の岩絵具の素晴らしさにいたく感動しまして、その惹きつけられ方が尋常ではなかったんですね。でも、それはむしろ人間として当たり前のことであって、そういう感性こそがこの現代社会において忘れられてしまった大切な本能なんだと後になって気がつきました。歴史を遡れば、もう何万年も前の我々の祖先が、岩絵具の原型である美しい岩石を見て、やはり僕と同じように感動して、それを砕いて顔や体に塗ったり、穴をあけて 装身具として身にまとったりして いた。要するに彼らは、自然を身にまとうことによって宇宙と一体化し、ここに奇跡的に生まれてきた喜び、生きている喜びを何とかして全身で表現したかったわけです。それが芸術の一つの始まりなんですね。僕 が高校生のときに岩絵具に感動し、その本能的なことに目覚めた瞬間というのは、大げさに言えば、現代人を代表して何万年も前の人類が体験したことの追体験をしたと言えるぐらいの、とても大きな瞬間でした。21世紀の今を生きている僕らが、数万年前の我々の祖先とすべての境界、バウンダリーを超えて、人間の最もベーシックな部分を共通項として繋がることに僕はすごく感動し、「芸術とはこういうことなんだ」と教えられたんです。それは、自分が目覚 めたその感動を、自分が 見つけた美を、一人でも多くの現代人に伝え、それを分かち合いたいというような思いに僕を突き動かしました。そのとき僕は芸術家としての産声を上げ、歩みだしたのだと思います。

20代の終わりに数か月ニューヨークに滞在し、美術館 や ギャラリーに 通う毎日を過ごす 中で、ニューヨークの現代アートと日本のそれとの決定的な違いを感じられたそうですね。

ニューヨークの現代アートはオリジナルです。「日本の現代アートは、アメリカの現代アートのコピーだ」というのが結論でした。だから日本の現代アートを見ていると、派生したものを見ている感じ がどうしても拭 えなかったんです。「一体、戦後の日本の文化って何なんだ?」と思い知らされ、全否定されるような経験をして、とにかく自分でオリジナルなものを作らなきゃ駄目だということを嫌というほど 感じて帰ってきました。その 直後に、あらためて日本の自然に触れ、山水の美しさに開眼するという体験をしました。それが僕を自然回帰へと向かわせ、自分の中にあった “ 壮大な時の流れを描く”という潜在的なテーマを顕在化させるきっかけになったんです。

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HP用千住作品3

クリフ#1