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大村 智

ノーベル賞受賞写真
ノーベル賞受賞式で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王(右)から医学生理学賞のメダルと証書を受け取る大村智・北里大特別栄誉教授=ストックホルムのコンサートホールで
2015年12月10日

熱帯地域でまん延し、重症化すると失明を引き起こすオンコセルカ感染症の特効薬「イベルメクチン」の発見と開発をしたことが 評価され、2015年度のノーベル生理学・医学賞と文化勲章を受賞した大村智教授。女子美術大学の名誉理事長という顔も持ち、美術品との出会いや、芸術家たちとの滋味溢れる交遊録を綴った著書『人生に美を添えて』を出版するなど 美術をこよなく愛する大村教授を、自身が 寄贈したコレクションを常設し館長を務める韮崎大村美術館に訪ね話を伺った。

大村智とアフリカの子どもたち
イベルメクチンによってオンコセルカ症がほぼ撲滅されたガーナにて、子どもたちと(2004年) 写真提供:大村 智博士

大村:自分でも見極めるのが割合上手いと思っているんです。絵も、良い悪いは見てパッとわかるんで す。人物も皆そうです。子どもの頃の情操教育があってそういう感覚が 備わった。奈良女子大の数学の先生で文化勲章を受章した岡潔先生曰く「人間は情緒だ」と。情緒を育むのは何かっていうと美術だと思うんだよね。

藤田:ご著書を拝読し、先生の陶器に対する造詣の深さに感嘆させられました。きっと、微生物のことを考えて土を採集し続けるうちに「土」に対する深い観察眼が 育まれ、延いてはその 土から生み 出される陶器に対する優れた審美眼が備わったのではないかと推察しました。

大村:私は小さいときから実家で農業をやっているから、土いじりは慣れている。農業から土を外したら農業にならないわけだから、土に対してはいろいろ勉強しましたよ。田んぼで土を起こすところ、水が漏らなくするように淵を作るところ、それはみな土の性質によるわけです。そういう知識は、陶芸の鑑賞の仕方にも関係があると思います。

藤田:農家の方の土に対する知識の深さはものすごいと聞きます。

大村:すごいです。だから私は、農業は科学だという話をよくするんです。

藤田:窯の中で火の焼成によって生まれる色や模様、人間の力と火の力が合わさって出て来る風景に魅かれるそうですね。

大村:それが魅力じゃないですか。最初から人間が考えたとおりにいってしまったら面白くない。その時の火の温度とか、炎がどこへ流れていくかとかわからないでしょう。だからこそ面白さが広がると思うんですよ。

藤田:「奇跡の薬 =イベルメクチン」を生むことになった細菌は、伊豆半島のゴルフ場近くの土の中から見つかったそうですが、それは膨大な数の土壌を採取し続けた結果、たまたまそこから発見されたわけで、それは芸術家が試行錯誤を続けた結果、独自のスタイルや傑作を生み出すことと通じていると思います。

大村:富士山がなぜ高いかと言えば、裾野があるからでしょ。裾野というのは基礎。うちのグループは基礎の研究をしっかりやったんです。その基礎の中には、微生物をあっちこっちに行って取るということも、それを培養する工夫も入ってくる、全てがかみ合ってしっかりした基礎を作った中でイベルメクチンという最高峰に到達したということだと思います。

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片岡球子作品
片岡球子 面構 烏亭焉馬と二代団十郎 1994 160.0×260.0cm 韮崎大村美術館蔵