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奥谷 博

010-017_奥谷博pdfCesarの指輪_ページ_3
自画像─Césarの親指─ 2013 193.9×259.1cm 油彩、キャンヴァス

この夏、1999年から2015年まで自身の画業を集大成した画集『 奥 谷 博 II 』(日動出版 )を出版した洋画家・奥谷博氏。出版記念として開催された日動画廊での個展で催された土方明司氏(平塚市美術館館長代理)との対談の一部を、奥谷氏の秀作の数々と共に紹介する。

土方明司(以下:土方):奥谷先生の芸術の特徴というのは、日本では稀にみる壮大な構想画ですね。我々日本人には、どちらかというと絵画も、文学も叙情的なものに重きを置き、私小説的な世界を喜ぶ所があると思うのですが、奥谷先生の作品は、その叙情的なもの、私小説的な所をなるべく排して、大きなテーマ、日本人、あるいは人類といった大きな視点で、何か宗教的とも言える様なテーマを掬い取ろうとする所があるのではないかとお見受けします。2007 年に先生はパリのユネスコ本部で大きな個展をなさいましたが、それがここ近年の先生の活動の中では、大きな展開の一つではないかなとお見受けしているんですけど。

奥谷博(以下:奥谷):そうですね。(その個展では)世界遺産をテーマに展示したらどうかという話になりました。それで部屋(展示スペース)を見せてもらったところ、最後の部屋にジョアン・ミロの陶板の7m位の作品があって、それが退けることが出来ないんですよ。これに太刀打ちするには、やっぱり日本的なものを持ってくべきじゃないかと思って厳島神社の鳥居の絵ね、あれで太刀打ちしようと考えたんですね。

土方:先生の描かれる厳島神社っていうのはちょっと怖いぐらいの迫力を持っているんですよね。風光明媚な絵葉書的な厳島神社とは全く違って、まるで異次元のような厳島神社。あれはやっぱり優れた画家が持っている眼の力が発動しないとあの異次元の様な景色は出て来ないんじゃないかなと思います。翻って今年はカンボジアに行かれたという事で、新作があちらのアンコールワットですね。

奥谷:この作品では、周囲に大きな堀がめぐらされ「聖なる山」と呼ばれるアンコールワット寺院を中庭から見ているんですけど、フランスの文化大臣も務めたアンドレ・マルローさんが二十代の頃この遺跡の一部を盗み出して牢屋に入れられました。僕はこのマルローさんに非常に思い出があるんです。フランス滞在中(1970年代半ば)に《アンドレ・マルローの空想美術館展》という展覧会を観に行ったところ、そこに大和絵の傑作、藤原隆信の《平重盛像》があったんです。私はパリ滞在中の三年間は、ヨーロッパの彫刻や油絵ばかり見ていたものですから、「日本にはこんな素晴らしい作品があるのか」と、すごくショックを受けたんです。まず影が無い。そして線の美しさがすごくて構図が素晴らしい。「何で俺は日本の美術をもっと真剣に見なかったんだろう」と初めて思いました。それで、自分は日本人なんだから日本の油絵ってものを描かないといけないと思った。私の一つの転機です。

010-017_奥谷博pd作品_ページ_8
日出処 2002 193.0×210.0cm 油彩、キャンヴァス

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